
『レポゼッションメン』はエリック・ガルシアによる原作の人工臓器で長寿が可能になった近未来を舞台にしたSFサスペンス。かつて自動車取り立ての『レポメン』という映画があったが、それとは違う。人工臓器購入債務の支払能力がなくなった人間への取り立て(レポメン)で生計を立てていた腕利きのレミー(ジュード・ロウ)は、ある日、取り立てに失敗し、重傷を負ってしまう。一命を取り留めるための手術により、人工心臓を埋め込まれ、多額の負債の人造臓器回収人となってしまう。追うものから追われるものに立場が逆転し、冷徹な回収人に徹しきれなくなったレミーは謎の女性債務者ベス(アリシー・ブラガ)と出会い、自分が生きてきた社会に疑問を感じ、事故事態が意図されたものであったことがわかり、かつての同僚・友人と戦うことを決意する。生き残るための逃走劇、死地を脱するための激闘、・・・しかし、衝撃のラスト。
本作は、名作『ブレードランナー』の雰囲気で、現代社会が抱える問題や病巣を写し取る。高度医療科学の行き着く先=臓器のコモディティ化が債務と結びついた時、近未来は地獄絵図となる。人工臓器製造会社のファイナンス部門は人工臓器の一括購入を嫌い、高利融資(リース)を狙う。犯罪ビジネスモデルであるが、近未来では合法である。欲望が合法化した社会の末路である。
2007年以降の世界金融危機はレバレッジ経済(=米国「新自由主義)とコモディティ化(労働さえ)の破綻であり、現在、先進国は負債デフレーションの蟻地獄にある。住宅購入と過剰消費のための過剰債務(レバレッジ)により様々な社会問題(暴力、売春、自殺、クスリ・・・)が起きる。一方、常軌を逸した金融緩和=超過剰流動性と新興国超過需要からコモディティ価格上昇(食糧価格、貴金属…)、結果として(コストプッシュ)インフレで起こる新興国の民衆蜂起も可能性が高い。完全にグローバルバランスが崩れている。グローバルリバランスの過程で大きな衝撃がおきよう。
・・・・次ページ
スポンサーサイト