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『武士の家計簿』と福島原発汚染水

2011. . 25
              水産業

 『武士の家計簿』はベストセラー「武士の家計簿『加賀藩御算用者』の幕末維新」(磯田道史原作)を、森田芳光監督が映画化。代々加賀藩の算用者/下級武士が、借金まみれの家、藩の財政姿を立て直す姿を家族愛や絆をタテ糸に描いた作品。江戸時代後半。御算用者(会計係)として、代々加賀藩の財政に関わってきた猪山家。八代目の直之は、生来の天才的な数学感覚もあって働きを認められ、めきめきと頭角をあらわす。そんな中、米の横流の不正を発見、隠ぺい工作のため左遷人事となる。しかし、目付(今でいえば内部監査)により不正が暴かれ、左遷の取り止めに加え、異例の昇進を果たす。順風満帆な人生を歩き出したが、一方で猪山家の膨大な借金限界に。直之は「家計立て直し」を宣言、家財一式を処分、質素倹約をし、借金の返済に充てるという苦渋の決断、長く苦しい財政立て直しの道を歩き始めた…。この困難な道のりは家族の歴史であり、観る者自身と重なり、家族愛や絆が心を打つ。
 財政立て直しの手立ては、単純明快で大胆な入払のスリム化。「財政立て直し」は現代では最も重要なテーマ。ギリシャ等のソブリンリスク、米国住宅不良債権深刻化…すべては「バランスシート調整」を起因としたデットデフレーション、デレバレッジの中で起きた事象。この潮流の中でも、人々からの搾取により無関係であった企業も大震災でこの無限地獄に落ちた。勿論、東電。原発を作れば作るほど、電気料と補助金で儲かる仕組みでのうまみをしゃぶり尽くしてきた。原発事故でこの仕組みが破綻し、天文学的な賠償が迫る中、この企業に猪山家のような真摯で正直な姿は皆無である。家財一式を処分し裸になる覚悟はない。始めから年金カットや報酬返上はない。この期に及び、まだ醜く生き延びることしか頭にない。ビジネスで生き残る努力は重要だが、その前に社会的責任がある。
 福島原発の放射能汚染水は、報道されるように危機的状況。梅雨のなか、地下にもぐり込んだ溶解ウランの地下水を経由した放射能汚染拡散が懸念される。回避の遮蔽壁になぜか着手しようとしない。それは、来週28日の総会対策。遮蔽壁費用は債務超過問題を引き起こしかねないからと…。海洋の放射能汚染が日々進んでるのを承知で、遮蔽壁をあきらめ、嘘をつき時間稼ぎに奔走している。海洋放射能汚染は何れ、国際問題となり、国家賠償に発展する可能性が高い。そもそも、東電を隠れ蓑にした電気料でこの国家賠償等を税でない形で永遠に払わせる狙いが東電賠償スキーム。東電、株主というステークホルダーは責任を出来るだけ曖昧にしようとする話である。
 海洋の永遠の放射能汚染は、漁業に壊滅的インパクト政府、東電はこの問題にふたをし続けている。この問題は、現在、上杉隆氏をはじめフリージャーナリストが取材し、小出京大助教、武田教授で指摘され、何れ更に大きな問題となる。残念過ぎるが数10年後には地球海洋資源へのインパクトは想像をこえる…。
 金融市場は、既にこの状況を暗示する。他の多く、日経平均は最安値しない中、掲載した水産セクターは震災直後に最安値を更新した。ダイナミックペンタゴン分析(投射法)で示した36度チャネルは依然下落トレンド。此処から立ち直る様子はない。海洋汚染が大きな問題となれば、海洋国家日本の死活にかかわる。輸出、物流セクターも何れ同じような状況が想定される。

 潔く現実を受け入れる覚悟が必要である。息子の元服の祝いに、出費を抑えるため鯛の絵で済まし、「鯛じゃ、鯛じゃ」とはしゃぐ家族。直之に貧乏が辛いかの問いに妻は「面白」と返す。貧乏は嫌だが、倹約の工夫が面白いという。3.11はもうひとつの敗戦であり、パラダイムシフト、世の中は非連続となった。放射能汚染の中で、数拾、数100年どう暮らすかという現実と向き合わなければならない。勿論、工夫で面白いなんてことは絶対無いが…。食卓にはいつまでも魚がのっていてほしい。

 「市民政治家」管直人は、8月終戦記念日まで死に物狂いで政治延命し、広島で「核廃絶 広島から福島へ」と宣言するのが本懐としていると田原総一郎氏が述べている。頭がどうかなりそうである…呆れた話し。立ちすくむしかない。(了)

 

 
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